広いスペースの中、そこだけが重い空気に包まれている。こぶりのガラス瓶を手に取り、物憂い
表情でラベルを凝視している賢妻がいた。私はおもむろに彼女と向き合い、じっと瞳を見つめたあと、
彼女が掛けているメガネのフレームに手を伸ばす。優しく触れた瞬間、急にいとおしくなりキスをした
・・はずがない。(笑)場所はイトーヨーカ堂で、こぶりのガラス瓶は桃屋の「ザーサイ」の瓶である。
何をするかと言うと、鼻の先の方までメガネをずり下げてあげるのである。“横山やすし”、古くは
“大村昆”の状態にしてあげる、と表現すれば分かりやすいでしょうか。でも、何故?
このところ、カミサンは老眼が結構進んでいるらしく、商品の品書きの文字が読みずらいようです。
というよりも、全く読めないらしい。年齢的には早めに始まってしまったみたいで、少しカワイソウ。
近視でメガネを使う老眼の人に特徴的な「メガネをずらす」という微笑ましい動作がありますよね。
視点をレンズから外すことで近くの文字や物が見やすくなる訳ですが、私は気を利かし、日頃の
罪滅ぼしに・・・とすすんでお手伝いしてあげているだけなのに、彼女にとってはかなりの屈辱らしく、
「やめてよ!」と私の手を払いのけて本気で怒るのである。当たり前か。(笑) カミサンはずっと
コンタクトレンズを装用しているが、このような不便(ズラせない)が生じるために最近はメガネに
変えていることが多い。
眼が悪いというのは不便なものです。私は使い捨てのソフトコンタクトレンズを装着していますが、
近視の矯正は中学一年から始まりました。どんどん進んで、今の視力は両眼共に“0.03”程度。
強度の近視なので矯正しないと生活できない。その分老眼の始まりは遅いらしく、同い歳の会社の
同僚が・・・「ウソ!? 信じられない。お前ホントにそれ読めるの?」と驚くほど、小さなExcelの
文字も楽勝で読める。それだっていつかは確実に老眼になるのであり、そうなったらカミサンをいじる
訳にもいかなくなってしまう。以前、ギタリストの中川イサトさんがライヴのMCで、ギターネックの
上側に入っているポジションマークが見えなくなってきたので特別に大きくしてもらった、ということを
仰っていた。自分にもそういう場面が直ぐにやってくるのでしょう。正直、余り嬉しく無い。(笑)
考えてみると、もう30年間も毎朝コンタクトレンズを装着している訳です。(30年×365日×2個=)
21,900回も眼にレンズを入れてきたのです。こりゃ凄いことだなぁと思う。でも、最近は付けっぱなしで
寝てしまう事が多くなってきた。疲れてウトウトしている内にとり忘れるのだが、最長3日間連続装用
しても平気だったことがある。(笑) ただ、この頃は疲れているのか、朝の寝ぼけた状態が重症。
レンズを付けたまま起床し、更にその上にレンズを付けることもしばしば。そんな時は全然焦点が
合わず、「見えない! 見えない! 見えない!?」と手をバタバタして狼狽している自分がいる。
う~ん、こっちの方がよっぽど“横山やすし”っぽいかぁ。(笑)
まだ若いのにカワイソウなカミサン。4月の結婚記念日には凄く立派な老眼鏡をプレゼントして
やろうか?
きっと怒るなぁ。でも、大事にしないとね。(笑)
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