達也が自分の部屋を綺麗に片付けた。勿論もうすぐ始まる新しい生活に備えてのこと。
受験勉強に使った参考書類は影も形もなくなった。苦手としていた古文の問題集などは
合格が分った当日に本をビリビリに破いていたが(笑)、高校で使用していた教科書
などその他モロモロ、先週で全て処分したようだ。もう、いつ大学生活に突入しても
大丈夫な様子。先立って準備してあげた専用のノートパソコンが、これも、買い換えて
シンプルな形状になったオシャレな机の上に鎮座している。開けられたトップからは
オレンヂ色のmixiの画面が覗いており、いかにも大学生の部屋らしい雰囲気に変わった。
廊下に目をやるとさまざまなモノが並んでいる。保育園や小学校低学年の頃に使って
いた玩具も多くあり、怪獣のフィギュアやいろいろなシリーズを揃えてあげたレゴブロックも
大量に放出されている。これらはカミサンが勤務する保育園に提供できるので無駄には
ならない。
出されているモノの中に色紙を見つけた。
『あぁ、これは小学校の時に達也が書いたやつだ。これでカミサンと大笑いしたっけ』と、
墨汁で書かれた字を眺め、その当時のことを思い出してまた笑ってしまった。
確か五年生の時だったと思う。
国語の時間に「(自分が)大事だと思うこと」を題にして、各自が色紙に毛筆で字を
したためる授業があった。このお題を投げられて、五年生のレベルなら普通は“友情”
とか“勇気”とか“思いやり”などと書くのだろうと思う。しかし、達也が表現したのは、
今、目にしているこの色紙に書かれた言葉だったのである。それは・・・
今、見てもやっぱり笑える。結局、担任の先生に書き直しを命じられた達也は“平和”と
書いて提出したのであるが、あの時この色紙を持ち帰ってきた達也に何で“安い”って
書いたのか、その理由を尋ねてみたら「大事なことだと思ったから」と素直に答えていた。
間違っていない。正しい。(笑)
こういうのって、価値はないけれど捨てるのがもったいない気がする。残しておけば
未来の嫁を笑わす材料に使えるだろう。
で、即、回収。