今朝、通勤で乗ったJRの車内に興味をそそる人がいた。
その人は私の前、ドアと向かい合う形で立っていた。車内の混雑度合いは比較的緩やか。新聞も
タテ折していればひろげて読める程度。
注目したのは、その人が“スルメ”を食べていたから。(笑) 私は後ろから見る状態になっていて
最初は分からなかったのだが、特有の香りが漂ってきて気が付いた。間違いなくサラリーマン。
スーツを着て、デイパックを肩に掛けていた。手首にコンビニの袋をぶら下げ、スポーツ紙の
芸能欄を読みながらスルメを噛み続けている。通勤客がほとんどの車内では、この“絵”と“匂い”
だけで既に十分異彩を放っている。
字を読むスピードが遅いのか、あるいはファンなのだろうか、ユーミンの記事から一向に目線が
移らない。ホントにずっと同じところを見ている。
やっとページが変わり、一転して、その後は驚くべき速さで新聞の“面”が変わっていく。だが、
面が変わるたびに新聞の折の秩序は失われていき、最後は通常の5割増しほどの大きさに変身
した。簡単にいうとだらしなく“グジャグジャ”でゴミ箱の中に押し込められている状態に近い。
噛み続けていたスルメは半分程度の長さまで短くなっている。
こういう場面、人間ウォッチングの好きな私は、確実に『考察』という趣味の世界に入る。(笑)
「一体この人はどういう人だろうか?」とプロファイルを開始。まず、実態観察から・・・。
・頭髪は余り気にしないようで寝起きに近い状態
・左手薬指に指輪は確認できない
・三十歳台半ばに見える
・スルメを噛み切る量は少ないが一回に要する時間は長い
・通勤電車の中で人目を気にせずスルメを噛み続けられる
・良く顎(あご)が動く
・新聞の管理状況からは整理整頓が苦手なタイプとうかがえる
推測されるのは・・・
母親が大好き。後片付けが出来ないが、それで怒られたことはない。オヤツにスルメを提供し
続けていた家庭に育ち、口唇欲求が抜けないまま成長。大人だが、少年の心を今も忘れていない
独身35歳。現状から分かるのはここまでか・・・。
人物像がだんだん見えてきたところで、突然の動きがあった。スルメが全て形を消すと同時に
持っていたコンビニの袋に右手が入る。
『今度はドリンクだ!』
プシュッ・・・プルトップを空ける。
『ここは通勤電車の車内だよぉっ。こぼれるからやめようよ、それ』
持ち替えた時に缶がハッキリ見えた。
『え゛~、しかもキリンの“氷結”。チューハイじゃん! レモンだよ!』
プロファイリング失敗。ただのアル中だったようだ。
悔しい・・・。
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