達也が大学に入学して七ヶ月が過ぎた。
早いね。
去年のこの時期は受験勉強に明け暮れていたんだよなぁ。
今は毎日、刺激的な新しい経験が続いているみたいだ。
この頃はサークル活動に関する会話量が多い。
所属するのはインバウンド(訪日外国人旅行)を研究しつつ
旅行なども楽しむ団体です。大学準公認、発足して数年の若いサークル。
本人は、特に強い目的をもって入部したワケではなかろうと思う。
メンバー構成としては、二年生が少なく一年生が多いらしい。
そんなこともあって、一年生と言えども予測を超えた忙しさがあるようです。
先日開催された学祭では(一年生なのに)展示の要職を命ぜられたそうな。
先輩を手伝う中で日々発生する様々な出来事は、本人にとっては
新しいことばかりなのだろう。例えば、各地の観光協会とのやりとりに
際しての接触方法、文書作成、それに伴うビジネスマナーなど、
分からないことを一番身近な社会人である父親に質問してくる。
心配の種、関連する質問が新入社員のようで、これを教えるのが
結構面白い。
で、最近のこと・・・。
四年生は引退、三年生は就活、そして二年生は人数が少ない。
この背景ゆえ、次年度は現一年生が主導的立場になることから
先般、そのリーダー選びが行われ、達也がその役に選ばれたらしい。
あ~らタイヘン。(笑)
正確に言うと、恣意的に “選ばれちゃった” ようなのだ。
だから、本人はもう、超~ッ心配でたまらないのである。
俺につとまるはずがない。
どうすればいい?
親から見て役目を果せる人間だと思う?
投票の数が割れて、最後は先輩のリーダーが決めたんだよ。
そういうのって大丈夫なの? 許されるの?
それで皆んなが付いてくると思う?
・・・などなど、杞憂のかたまり。
自分を卑下する言葉がたくさん湧き出てくる。(笑)
自信なさげにうろたえる “リーダー候補” を目にすると、どうしても
私の方が“管理職” モードに入ってしまう。自宅にいながら管理職?
これは、ある種の職業病ですね。(笑)
「立場が人を作る」ってことがあるんだ
自分にチカラが無いと思ったら、泥臭くてもいいから行動で示すんだよ
場面にきちんと向き合って、とにかく一生懸命やる
そうすれば時間が多少掛かっても皆んな信頼してくれる
リーダーが偉いんじゃない。任せっぱなしじゃなく、部下の先頭に立ち
一緒に考えて動いてくれるヤツがリーダーなんだ
などと応答してあげるが、それでもグズグズしている “リーダー候補” に
「じゃ、止めちゃえよ」
と、突き放しの一撃を加えた後、
なかなかそういう経験できないでしょ。自分を磨くには絶好なのにね。
リーダーの立場なんてことばっかり考えないで、
自分の上積みを作れる立場だと思えば楽しいんだよ
それはそのポジションの人にしか経験できないんだぜ
それでも、自分の可能性を捨てちゃうんだ?
ありゃりゃら、もったいないねぇ
こう刺激する。すると・・・
「分ったよ。でも、皆んなに物事を指示する時はどういうふうに命令したらいいの?」
と、今度はいきなり具体的な場面を想定して訊いてくる。
ホントに小心者だなぁ、と心の中で笑いつつ
簡単、簡単。仕事を指示する時に一言、
『これ、お願い。分らないこととかあったら言って。手伝うから』
こう付け加えてあげればいいだけだよ
今度は一瞬でスッキリした顔に変わった。
あぁ、そうか。なるほどね!
こうした5~6分程度の会話も結構な内容である。
話の内容は何でも良いけれど、自分の子供とオトナ寄りの会話が
出来るのが、自分には格別に嬉しいことでもあります。
遥か遡って自分が大学の頃、父親とこんな会話を交わした覚えは無い。
・・・と書くと、
父親の方が話してくれなかったように聞こえてしまうが、
それは、父親を遠ざけていた自分のせいだった。
最近、父親もこんな会話をしたかったんだろうなぁ、と思うようになった。
自分だけ楽しさを享受しているようで、恥ずかしさを感じる。
アンフェアだよな、やっぱり。
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