私はほとんど本を読まない人間なのですが、読む対象としてどんなジャンルが好きかと訊かれたら
「スポーツドキュメンタリー」と答えます。まぁ、それとてアクティブに読もうとしている訳ではないの
ですが・・・。
その最初は30年前、大学生なりたての頃に読んだ沢木耕太郎の「敗れざる者たち」だったと思う。
沢木さんの文体があまりにカッコよくて、題材の前に自分がいるかの如き臨場感を感じました。別に
物書き志望ではなかったけれど沢木さんには憧れていましたね。
レベルはともかく、自分で経験したスポーツ(野球・陸上競技・サッカーなど)や、観戦の対象として
好きなスポーツ(ラグビー・モータースポーツ・格闘技などあらゆる種目)、いずれもその文章表現には
興味が湧くのです。特に心の動きであったり、題材となっているプレーヤーの人間描写はフィクションで
ないだけにとってもリアル。そこに嘘が無いから好きなのだろうと思います。でも、実は“読みたい”
という気にさせる源(みなもと)は人間描写している書き手の方の人間性なのかな、という気もします。
題材に対して著者が(人間として)共感できる向き方をしていると感じさせる文書は、やはりリアルです。
目の前の事実を伝えるだけでなく、そこから人間性を感じ取り、書き手の気持ちを反映させた文書こそが
本当のドキュメンタリー。なので、書き手に共感を持てると気持ちの良い読後感を得られます。また、
そういった意味では、書物ではなくスポーツ新聞のコラムからも同じ感覚を味わう事ができます。
仕事上(特に今の私のポジションでは)通勤中には日経新聞を読むのが一般的かもしれませんが
私の読む新聞は「東京中日スポーツ(=トーチュー)」です。(笑) 120円で他紙より10円安いのに、
この新聞は侮れません。登場するスポーツコラムニストは代々自分のツボに嵌まる人ばかりです。
特に、かつては(もうお亡くなりになってしまったけれども)佐瀬稔さんの文章が大好きで、読む度に
その中に引きずり込まれた。才能ある作家だったと思います。こんな文章が書ける人ってホントに
凄いなぁ!・・・いつもそう感じさせる文体でした。
そんな観点から言うと、今一番のお気に入りコラムニストは、遠藤智(=えんどうさとし)さんです。
この方は二輪(バイク)のワールド・グランプリレースである“WGP”を追い続けているグランプリ
ライター。私自身はバイクには乗らないけれども、この人の人間味溢れるコラムがとても好きです。
今のところ著作が無いのが残念。それと、もう一人がスポーツライターの増島みどりさん。この方は
女性の視点が文章に適度に散りばめられており、文体がとても優しい。けれどもきちんと“キモチ”の
込められた表現をしている。やっぱり共感できるタイプの書き手です。
私は感受性が弱い人間と自覚しているのですが、スポーツドキュメンタリーやスポーツコラムの文章で
心が“じわっ”とさせられた事が珍しくない。気持ちに入り込んでくる要素は何でも身につけておきたいと
思います。だから120円のスポーツ紙と言えどもバカにはできません。自分にとっては『経済情勢』
よりも『人間探求』の方が大事なのです。興味をくすぐってくれる対価としての120円は安い!
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