日曜日のこと。
最寄のイトーヨーカ堂の駐車場から売り場に向かう道で、
買い物袋を手にした若い母親と三歳ぐらいの男の子が
手を繋いで歩いていた。
二人はこちらに向かってくる。
母親の顔を見上げて男の子が何か問いかけたようだった。
直後にすれ違ったのだが、
その時、母親の発したやけに生々しい言葉がハッキリ聞き取れた。
“ 明日からお父さんは会社に行きませんっ!”
え、えっ、タイヘンじゃない。
ご主人がリストラされちゃったのかぁ・・・?
二人が通り過ぎてから瞬間的にそう思った。
それが諦観なのか怒りなのか?
何がそうさせているのか、さばッとした母親の語調は極めてシャープで
言葉に潤いは感じられなかった。
可哀想に・・・。
あの可愛い男の子は三歳ぐらいかしら?
小さい子供を抱えてタイヘンだろうなぁ・・・。
リアルな言葉を聞いてしまうと、
会社を辞めざるを得ない一家の大黒柱のことを想像して
どうしても二人が哀れに見えてしまう。
クルマから下りて先んじていたカミサンに信号のところで追いついた。
カミサンは何故かニコニコしていて、後ろを振り返りながらこう言う。
ねぇ、今、すれ違った親子連れの会話が面白かったのよ。
親子連れって、あの二人のこと?
そうよ。チョー面白かったのよ。
面白いなんて酷(ひど)いなぁ。あの二人、明日からタイヘンみたいだぞ。
何が?
旦那がリストラで会社を辞めちゃうみたいなんだ。
それっぽい会話をしていた。
えっ!? 何かの聞き間違いじゃないの?
いや、明日から会社に行きませんっ!・・・て、確かに言ってた。
おかしいわね・・・
どんな会話をしていた?
どんなって・・・。アッ!
何?
あぁ、そういうことかw
カミサンは何か気付いたようだった。
親子の間ではこんなやりとりがあったらしい。
・
・
子:ねぇ、ママ。ママは、ろくおくえん(6億円)もってるの?
母:持ってませんっ!
子:どうしてもってないの?
母:もってるはずありませんっ!
子:どうして?
母:あったらこんなところに住んでませんっ!
子:おかねはないの?
母:持ってたらヨーカ堂の袋なんか下げてませんっ!
子:おかねはあるの?
母:あったらこんな服は着てませんっ!
どうやら私は、この流れの延長で
“ (6億円持ってたら)明日からお父さんは会社に行きませんっ!”
という、母親のセリフを耳にしたことが分った。(笑)
建屋の角に宝くじ売り場があり、
男の子は繰り返し流されるアナウンスで「6億円」をすり込まれ、
素直な気持ちから母親に質問したのだろう。
先走り、要らぬ受け止め方をしてしまった自分を笑ったが、
それ以上に、的確で分りやすい母親の回答表現に大笑い。
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