遺言代わりに書き留めています。 自分と自分の周りのこと・・・
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
昨日、帰宅途中の電車内で面白い場面に遭遇した。
もう下車駅に着こうかという時、座席でスマホをいじっていると
左前方で人影が動いた気配を感じた。
顔を上げてそちらに目を向けると、ドアから入ってすぐ先のスペース、
車両の中央で中年のバーコードおじさんが上半身を大きく捻転している。
見たところ、どうやらおじさんには虫がまとわりついており、
それを避けるために身体を動かしているようだった。
おじさんが太っていたせいでそう見えたのかもしれないが、
私には「動かす」というよりも「踊っている」ようにしか見えず、
虫から逃げ惑う切羽詰った表情も加わり、
それは、半ばトランス状態かと思わせるほどの激しいパフォーマンスだった。
その動きの様から、私はてっきりスズメバチのような
かなり危険な虫がおじさんに絡んでいるのだろうと推測した。
が、
目を凝らして見ると、それはホバリングしておらず、
少なくとも蜂のような危ない虫ではなさそうであった。
ただ、おじさんの様子からして、危険ではないが相当に大きな
得体の知れない虫だろうと想像していた私は、
一瞬、壁に止まったその虫を見て思わず吹き出した。
おじさんを踊らせていたのは、ただの「蛾」だったのだ。
それも決して大きくない、ちっちゃな蛾である。
脅威を感じさせないモスラとそれに逃げ惑うおじさんの動きには
見事なコントラストが付いており、当然の如く乗客の視線が集まった結果、
車両の中央は一転して立派なセンターステージと化した。
モスラが再び飛び立ち、おじさんに向かう。
おぉ!
乗客がおじさんに注目する中、
ステージではちょっとした変化が起こり始めていた。
おじさんの周囲には他に四人の乗客が立っていたのだが、
驚いたことに、その人たちもおじさんに合わせて動き出したのである。
多分それは、(おじさんの動きと表情から)ひどく危険なものが
自分の近くで飛んでいると瞬間的に誤った想像をした結果の、
自然な行動だったのだろうが、逆にその動き方が微妙に不自然。
人間の行動は直前に見たものを真似しやすいのだろうか?
ちょっと捻ればよいものを、他の四人もおじさん同様の
かなり激しい円周運動に突入したのである。
ステージは一層賑やかになり、おじさんを中心に据えた五人組は
なんてことないちっぽけな蛾に翻弄され、
まるでEXILE(エグザイル)のようにシンクロして踊り始めた。
なんだか、とても凄いシーンになっていた。
時間にしてほぼ一分間ほどのステージだったと思う。
電車は速度を緩め、駅に進入し、佳境の極みで停車した。
おじさんは通勤カバンを乙女チックに両手で抱きしめ、
今にも泣き出しそうな表情で隙間を突き破るように
ダンサーの輪の中心から飛び出した。
ドアまでの距離はそのまま花道となり、
小走りでホームに降り立ったおじさんの背中からは
「もうイヤ~ッッ!」という心の叫びが聞こえたような気がした。
ステージを退いた後も蛾がついてきた感触があったのか、
おじさんはホーム上でも何度か首をクネクネ、肩をカクカクしていた。
あのおじさん、相当の虫嫌いだったんだろうなぁ。
まさに『Choo Choo TRAIN』
こういう電車に乗車できた日はとても得した気分になれる。
COMMENT